更新日2021.09.12
「今どきシニア」の消費傾向と情報収集の特徴
少子高齢化が社会問題になってから30年が経過した現在でも、高齢者人口は増加の一途をたどり、「シニア層」が日本の市場を左右すると言っても過言ではありません。
2021年現在のシニアは「どのような消費傾向を持っているのか」また「消費行動の際はどのような情報収集をしているのか」を調査しました。
1.シニアマーケットは100兆円超えの巨大市場
日本の総人口は、2020年12月時点で1億2557万人。 そのうち65歳以上の人口は3,621万人で、総人口に占める割合は28.8%。 2025年には総人口の30.3%になると予測されており、3人に一人が65歳以上になります。
(参考:内閣府 高齢社会白書 )
それに伴い、高齢者向けの市場規模は2025年に101.3兆円と予想され、100兆円を超える巨大市場となる見込みです。
(参考:みずほ銀行産業調査部)
以前からシニア市場を見込んだビジネス戦略が謳われてきましたが、成功例は多くなく、予測に反してシニアの財布の紐は固かったと言えます。その理由として、年金受給の先延ばしや老後破産の不安が考えられます。
しかし、今後ますます増大していくシニア市場に商品やサービスを提供することはさらに重要になってきます。「シニア」についてよく知り、的確な戦略を立てる事が明暗を分けると言っても過言ではないでしょう。
2.多様化するシニアの分類
今後も巨大化していくシニアマーケット。 では、「シニア」とは一体何歳から対象になるのでしょうか? 日本老年学会では、65~74歳は「准高齢者」、75~89歳は「高齢者」、90歳以上は「超高齢者」という区分を設けています。 しかし、国連の世界保健機関(WHO)の定義では、65歳以上の人のことを高齢者として定めています。 また、ビジネスの分野でも一般的に定年退職年齢の65歳以上を「シニア」とひとくくりにしている印象がありますが、人口の約30%を占める巨大な「シニア層」の中には、多種多様な状態の方々が含まれている事を見逃してはいけません。 ソーシャルサービスでは、シニアの身体能力や生活環境およびシニア市場の攻略にあたって必要となるマーケティング視点から下記のような分類を行なっています。 ※シニアの分類についてはこちらもご覧ください。 ソーシャルサービス「アクティブシニアとは?ペルソナ設定とシニアマーケティング 成功の鍵」 上記のように高齢者の生活スタイルや消費傾向は様々に分類されるので、シニア向けのビジネス戦略を立てる際には、どのカテゴリーのシニアをターゲットにするべきか、しっかりと絞り込む必要があります。3.注目の団塊世代もついに70代 「今どきシニア」の特徴
健康状態や収入によるシニア層の分類についてご紹介しましたが、もう一つ別の角度からみた注目すべきシニアのグループがあります。それは、1947~1949年に生まれ、突出した人口数が特徴の“団塊の世代“です。2021年現在、この団塊世代は72〜74歳になります。 昨年の統計では、この年齢を含む70〜74歳の人口は男女合わせて876.1万人でした。
画像引用元:グラフで見る!日本の2021年の人口ピラミッド
この世代の特徴は、圧倒的に人口が多いため、受験や就職、出世において強い競争意識を持っている傾向があります。また、若者だった頃にミニスカートやビートルズなどのアメリカ文化が流行し、その影響を強く受けた世代でもあります。そのため、新しいものが好きで行動力が高いことが大きな特徴で、これまでの70代とは違う考え方・感性を持った「今どきシニア」と言われ、ニュージェネレーションだと思われてきました。
確かに従来のシニアとは異なり、ポップカルチャーの経験値が圧倒的に高いので、若い感性を持っていますが、一方で身体的な不調が目立ち始める世代でもあります。
シニア向けビジネス成功の秘訣は、この「団塊世代」の変化を理解したマーケティングにあると考えられます。
4.シニアの消費傾向は「健康」と「交際」にあり
シニアはどんな事にお金を使っているのでしょうか。 総務省の全国消費実態調査の結果を見てみると、70代は男女ともに30代よりも「保険医療費」と「交際費」の支出が多いという結果が出ました。
出所:総務省「全国消費実態調査」
特に差額の大きい「交際費」について割合で見てみると、30代女性の交際費用が収入の3%であるのに対して、70代女性は収入の12%をも交際に消費しています。
この調査における「交際費」とは、世帯外の人への贈答品・祝い金などのほか、接待用支出や職場、地域などにおける諸会費および負担費です。そのため、シニアの交際費が高額になる理由は、退職後も社会とのつながりを求めているからと考えられ、趣味や地域のコミュニティを維持するための支出を重要と考える傾向があります。
一方、総務省統計局の家計調査でフィットネスクラブなどのスポーツ施設使用料の支出金額をみると,60歳代世帯の支出が最も多く,最も少ない30歳未満の世帯の約7倍になっています。なお,消費支出に占めるスポーツ施設使用料の割合は,年齢が高くなるに従って高くなっています。
さらには、サプリメントなどの「健康保持用摂取品」の支出金額をみると,70歳以上の世帯が最も多く,最も少ない30歳未満の世帯の約7倍になっています。
画像引用元:総務省統計局 家計調査
シニアの健康関連の消費項目として、フィットネスと健康食品について比較しましたが、実はこの2つは似ているようで全く異なるニーズが潜んでいます。
フィットネス支出の根底にあるのは「抗老化」、つまりアンチエイジングです。いつまでも若々しく、魅力的な自分をキープしたい気持ちが消費力につながっています。
一方、健康食品の消費行動の根底にあるのは「抗介護」、つまりアンチフレイルです。身体的な不調の自覚が出始めるのが65〜70歳なので、この年齢で支出が一気に上昇するのです。
5.シニアは新商品への関心度が高い
シニアの新商品への関心度について調査したデータでは「新商品に興味関心を持つ事がある」と答えたシニア(65歳以上)は88%で、高い関心度を持っているという結果が出ました。
画像引用元:株式会社リクシス 拡大するシニア市場のマーケティング
少し前の話になりますが、食器洗浄器や大型液晶テレビが人気になったのも、シニア層がブームの火付け役になっています。
6.シニアは情報収集に「ネット」と「紙媒体」を併用
「総務省 令和2年版インターネットの利用状況調査」によると、2019年における個人のインターネット利用率は、13歳~69歳までの各階層で9割を超えており、昨年と比較して60代以上の利用率が大きく上昇しました。 また、1年間の利用率の変化をシニアの年代別で見てみると、60代は13.9%増加して90.5%、 70代は23.2%増加して74.2%、 80代ではなんと36%も増加して 57.5% の方がインターネットを利用していることがわかりました。 このことから、シニアは情報収集の方法として「紙媒体」のみではなく、「インターネット」も併用していることがわかります。 SNSや動画サービスなど主要ネットメディアの利用目的のアンケート調査では、シニア層のYouTubeの利用目的は、1位「自分の趣味や興味に合う情報を得るため(48.8%)」、2位「暇つぶし(43.4%)」、3位「特定の分野で専門的な知識を持つ人の情報を得るため(20.3%)」となりました。 一方、20~40代は、1位「暇つぶし(58.3%)」、2位「自分の趣味や興味に合う情報を得るため(39.9%)」、3位「ストレス発散・癒やしとして(31.8%)」となり、若者がネットメディアを「娯楽」として利用するのに対して、シニア層は「情報を得る為」に使用しているという結果が出ました。(参考:マクロミル調査) この結果に、イノベーション理論の考え方を当てはめると、現在“レイトマジョリティ ー”の状態にあるシニア層も、今後は情報収集のためではなく、若者同様に「娯楽」としてインターネットを活用する日も目前です。 イノベーション理論とは: 革新的な新商品を受容する消費者層をその受け入れる順番の早いものから「イノベーター(革新者)」、「アーリーアダプター(初期採用者)」、「アーリーマジョリティ(前期追随者)」、「レイトマジョリティ(後期追随者)」、「ラガート(遅滞者)」の5つに分類します。 イノベーターは新しいものを自ら進んで採用する層、アーリーアダプターは流行に敏感で自ら情報収集を行い判断する層で、他の消費者の影響力が大きく「オピニオンリーダー」とも呼ばれます。アーリーマジョリティ以下は順次先の層が受け入れた後に徐々に追随していくことになります。 (引用:ferretWebマーケティング用語辞典) シニア向けビジネスを展開していく際は、そのような理論も踏まえて訴求方法を選択していく必要があるのです。 ※シニア向け媒体についての詳細はこちらをご覧ください。 ソーシャルサービス「【通販広告で効果を上げたい!】ネット・紙・電波媒体の種類と内容を解説」7.シニアの消費行動には情報の信頼性が不可欠
新しいものに関心が高く、情報収集に紙媒体とインターネットの両方を駆使する「今どきシニア」の姿が浮き彫りになってきました。 それでは、その「今どきシニア」が実際に消費行動を取るきっかけは一体何なのでしょうか? それは「信頼」です。 株式会社インテージの調査によると、シニアは新しい商品やサービスについて「納得してから取り入れる」と回答しています。 また、情報の選び方については意識的に選んでいる事がわかりました。 シニアは情報をどんどん仕入れるものの、信ぴょう性のないものには線引きをして必要なものだけを上手に取り入れているのです。 (出典:「インテージ 知る Gallery」2021年3月3日公開記事) このように、シニアに商品やサービスを訴求する場合は、信頼できる情報を付加することが大切です。8.シニアが興味を持つ情報発信者と「第3者の権威づけ」
最後に、「シニア層がどんな発信者の情報に興味を持つか」についての調査をご紹介します。 株式会社アスマークが行った調査では、1位 公式アカウント、2位 家族や友人の口コミ、3位 一般の利用者の口コミとなり、実際の利用者情報に高い興味を持っている事がわかりました。 この結果からもわかるように、信頼を得るには「第三者の裏付け」が効果的です。 また、この事を心理学では「権威づけ」と言います。 ある物事に権威を付け加えることで、信頼度を高めて人々の不安を取り除くという方法です。 この手法はマーケティングでも取り入れられており、商品や人物に権威となる情報を付け加えることで、消費行動に大きな効果が生まれます。 「権威」には以下5つの種類があります。- 専門家や芸能人の評価
- 具体的な数字
- 受賞歴
- 顧客たちの評価
- 資格や経歴