【まとめ】拡大し続ける健康市場の流れと展望|シニア層を虜にして勝ち抜くには
健康市場は近年政府が大きく支援している分野です。
政府はこれまで医療費、保健制度など公的サービスの構造改革や民間の事業支援を行ってきました。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、消費者にも健康・免疫に対する関心が高まり、健康関連の市場規模は今後も拡大が予想されます。また日本の高齢者人口は増加の一途をたどっており、「シニア層」がこの市場を支えているといっても過言ではありません。
この記事では、最新のヘルスケア及び健康食品市場の現状と展望を解説しながら、シニアマーケットを確実に取り込むポイントをご紹介します。
1.ヘルスケア市場|現状と展望
「ヘルスケア産業」とは健康の保持および、増進に役立つ商品の生産、もしくは販売または役務の提供を行う産業を指します。ヘルスケア産業の市場規模は2016年で約25兆円、2025年には約33兆円になると推計されています。
政府もヘルスケア産業政策の基本理念を「生涯現役社会の構築」と掲げ、経済社会システムを再構築しています。
ヘルスケア市場は大きく分けて2つに分けられます。
- 健康保持・増進に働きかけるもの
- 患者/要支援・要介護者の生活を支援するもの
(参考資料)ヘルスケア産業(公的保険外サービスの産業群)の市場規模(推計)の内訳
2016年から2025年にかけての市場予測
画像引用元:経済産業省におけるヘルスケア産業施策について
どのカテゴリも拡大傾向にありますが、特に突出したものとして以下が挙げられます。
知:200%の拡大予想
健康維持について正しく学ぶ情報収集のサービスや、自身の健康状態を感覚値でなく絶対値で把握するツールの需要が増えていきます。
運動:224%の拡大予想
フィットネスクラブの会員数はコロナ以前の数値を上回る増加を見せており、今後も伸び続けると見られています(特定サービス産業動態統計速報(2022年9月)。
この項目には、健康の維持・増進に関わるスタジアムを核とした街づくり、プロスポーツの観戦者数増加、スポーツ用品の販売などもここに含まれます。
遊・学:135%の拡大予想
楽しみながら健康を維持するという概念です。
ライフスタイルに健康を上手に取り込む事が健康維持に欠かせない、という意識が定着しており、今後更に伸びを見せると予測されます。登山などの体験型旅行やフィジカル系イベントなどのサービスがここに含まれます。
参入企業はいずれも新規ファンである若年層の獲得を視野に入れながらも、平日や閑散期に集客を担えるアクティブシニア層を重要なターゲットと捉え、定着化へ向けたさまざまな施策に注力しています。
アクティブシニアについて詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。
アクティブシニアとは?ペルソナ設定とシニアマーケティング 成功の鍵
2.健康食品市場|現状と展望
健康食品市場は、特定保健用食品制度や栄養機能食品制度等の政府による施策導入に後押しされる形で、年々拡大を続けてきました。
健康食品市場規模推移・予測
機能性表示食品の市場規模推移と食品種類別構成比(2020年度)
画像引用元:市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
株式会社矢野経済研究所が実施した「健康食品市場に関する調査」によると、2020年度は前年度比0.4%アップ、2021年度(見込み)は前年度比2.5%アップという結果に。この一因としてコロナ禍において消費者の健康・免疫への関心が高まったこと、また在宅時間の増加による、運動不足が引き起こす健康面への懸念も理由だと考えられています。
機能性表示食品のうち、サプリメントは2020年までは積極的な広告展開によるヒット商品の商品化などで急速に進捗していましたが、2021年は鈍化。
現在は競合が激化しており、市場としては伸びるもののマーケットとしては厳しい状況を迫られると見られています。
一方で、清涼飲料は手軽に飲用が可能であることから機能性表示食品化やヒット商品が誕生しており今後も市場の拡大が見込まれます。機能性表示食品市場は拡大傾向にあるものの届出撤回数が増えているという側面もあります。(「健康美容EXPO」より)
シニア層の健康・免疫向上への関心は高い状態が続いているため、今後も健康食品の需要は手堅いでしょう。
3.市場を支えるシニア層の人口推移
少子高齢化が進む日本では、2021年の総務省の統計によると人口のほぼ3人に1人
がシニアにあたります(シニアとは一般的に65歳以上の男女を指します)。
「シニアビジネス」は企業にとって取り組むべき巨大市場であり、人生100年時代といわれる今、仮に65〜100歳で計算をしても35歳もの幅があり年齢によってマーケティング内容も異なります。ヘルスケア、健康食品市場を支えるシニア層の人口推移はどう移っていくのかを見ていきましょう。
シニアの人口は2040年にピークを迎える
高齢者の人口推移 折れ線グラフ
※資料は、2010年までは総務省「国勢調査」、2013年は総務省「人口推計」(平成25年10月1日現在)、2015年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果
画像引用元:シニアガイド
このグラフから国内の65歳以上(シニア)の人口が2040年にピークを迎え、それ以降は緩やかに減少することがわかります。年齢別に見ると、75歳以上は2025年に2,000万人を超え、そのまま横ばい。65〜74歳は2020年頃から減少傾向にあります。つまり高齢化社会といっても全ての年齢が増加するのではなく、75歳以上が増えていくのです。
4.シニアを虜にする健康関連サービスのマーケティングとは
シニア市場は2つの意味で非常に巨大な市場です。
- 人口そのものが多い
- 「シニアである期間」が35年と、人生のライフステージで最も長い
シニアの健康関連サービスに対する意識調査まとめ
シニアは健康に対する意識が最も高い層でもあり、健康関連サービスの市場で成功するには、シニア層をしっかり取り込むことが命題であることは明らかです。
東京都福祉保健局が平成28年に18〜74歳の東京都民6,427名を対象に調査した結果をご覧ください。
Q:健康食品を購入(摂取)する際(しようとする際)、何に重点をおいているか。もっとも当てはまるものを 1 つ選択。
平成28年 都民を対象とした「健康食品」の摂取に係る調査結果報告書より
健康に対する意識が最も高い層であるにも関わらず、全体から見ると「健康食品は購入しない(購入したくない)」と答えたシニア層が約4割と最も多い結果に。
Q:直近の1年で利用(摂取)している「健康食品」を、どこで購入したか。(複数回答)
平成28年 都民を対象とした「健康食品」の摂取に係る調査結果報告書より
東京都福祉保健局 平成28年2月『都民を対象とした「健康食品」の摂取に係る調査結果報告書』を加工して作成
60-74歳の通信販売利用率はは28.9%と、18-39歳の9.3%よりも非常に高い。
このことから、シニアへのアプローチとして効果的な「新聞広告」や「折込チラシ」を使ったプロモーションがシニアと相性が良いといえる。
Q:「健康食品」をどのような目的で利用(摂取)しているか(いたか)。(複数回答)
平成28年 都民を対象とした「健康食品」の摂取に係る調査結果報告書より
東京都福祉保健局 平成28年2月『都民を対象とした「健康食品」の摂取に係る調査結果報告書』を加工して作成
事業者にとっての脅威
拡大し続ける市場ですが、事業者にとっての脅威も生じています。
新型コロナウイルスの影響でライフスタイル、ワークスタイルが大きく変わったことで、それまでの需要が大きく落ち込み業態転換をした企業も少なくありません。中には健康市場に業態転換した大企業もあります。競合も確実に増え続けるでしょう。
巨大かつ競合過多なシニアマーケットに自社商品をしっかりリーチしていくためには次のようなマーケティングが求められます。
1)消費動向を理解したマーケティング
シニア層は、人生経験が豊富なゆえに自身の判断力に自信のある方も多く、消費動機も若い世代とは異なってきます。
上記以外にも
- その商品が値段に見合った価値、効果があるのかを自分の目で判断する
- 商品誕生の背景やストーリーなどをしっかり理解しようとする
- 健康増進の目的として「骨」「目」「関節」などの具体的な箇所の老化を防ぐ意識が高い
などが挙げられます。
これらのニーズにどれだけ応えられるかが成功の鍵です。
2)セグメントしてターゲティングする
人生100年時代の中、年齢幅が35歳もあり多様なライフスタイルや趣味趣向があるシニアへは、もはや一括りのマーケティングでは確実なリーチはできません。
自社商品がシニアのどの層がターゲットになるのか、どうすればリーチできるのかを追求したマーケティングが必要です。
多様なシニアのセグメント例やアプローチ方法をまとめた記事はこちら
「多様な」シニアにアプローチできる雑誌と、雑誌と相性の良い広告商材を検証!
3)ロイヤルカスタマー化
顧客のロイヤルカスタマー化は、シニアに限らず全世代に共通するマーケティング手法ですが、一度信頼した商品を継続して使い続け、健康維持への意識が高く、リアルな口コミ活動を好むシニアには最も相性の良い戦略です。
【ロイヤルカスタマーを創出する方法をまとめた記事はこちら】
【顧客をファン化して売上をアップさせる方法をまとめた記事】
まとめ
国内のヘルスケア、健康食品市場は、国民の健康を維持・増進する産業として国が大きく支援しています。新型コロナウィルスがきっかけで消費者の意識も大きく変わりました。
今後20年近くは拡大する市場ですが、業界参入者も増えていき、競争は激化が予想されます。
日本の巨大なシニア市場は健康市場と最も親和性が高く、確実に取り込んでいくべきマーケットです。シニアマーケットの正しい理解と、マーケットに沿った戦略立案を行い、貴社のビジネスにぜひお役立てください。
最後に、シニアマーケティングの成功事例をまとめた記事をご紹介します。
【シニアビジネスが成功するポイントをまとめた記事】