人を想うサービスを通して、心豊かな社会に貢献する

更新日2021.09.17

ロイヤルカスタマーの創出と「カスタマーエクスペリエンス」の重要性

企業の商品やサービスの根強いファンとも言える「ロイヤルカスタマー」 その創出が企業にとって重要である理由をマーケティングの法則に合わせて解説します。 また、「ロイヤルカスタマー」の創出に欠かせない「カスタマーエクスペリエンス」について、顧客の年代ごとに効果的な事例をご紹介します。

1.ロイヤルカスタマーとは

「企業の製品・サービスに対して忠誠心(=ロイヤルティ)が高い顧客」 のことです。企業のブランドや商品に高い関心を持っていて、同じ需要に対応する企業やお店が他にあっても 他社に流れず自社を利用してくれるので安定した収益をもたらしてくれる存在です。 ロイヤルカスタマーは、商品やサービスを繰り返し購入し利用してくれる「優良顧客」や「売上上位顧客」と混同されやすいですが、「優良顧客」「売上上位顧客」は、企業や商品に特別な愛着を持っていないので、他社に魅力的な商品やサービスが現れた場合はそちらに流れてしまう可能性をはらんでいます。「企業の製品・サービスに愛着を持っていること」それがロイヤルカスタマーの条件なのです。 引用元:ソーシャルサービス「ロイヤルカスタマー戦略でやるべきこと3つと顧客育成方法ロイヤルカスタマー戦略でやるべきこと3つと顧客育成方法」

2.ロイヤルカスタマーを創出すべき理由は

それでは、ロイヤルカスタマーを創出することは企業にとってどれほどの利益をもたらしてくれるのでしょうか? ロイヤルカスタマーを創出することで得られる主な効果をご紹介します。

「1:5の法則」

新規の顧客を獲得するには、既存顧客の5倍のコストがかかるという「1:5の法則」があります。新規顧客は獲得コストが高いにもかかわらず利益率が低いので、新規顧客の獲得以上に、既存顧客の維持が重要であるという考え方です。

「5:25の法則」

顧客離れを5%改善すれば、利益が最低でも25%改善されるという法則です。 既存顧客は、前回よりも高額の商品・サービスを購入したり、他者に商品を紹介してくれて新規顧客の獲得に貢献してくれる可能性があります。そのため、新規顧客の獲得よりも、既存顧客の離反を防ぐ方が企業の利益になるのです。
法則

「アンバサダー効果」

また、ロイヤルカスタマーを創出するメリットとして、他の顧客に商品やサービスの宣伝をしてくれる「アンバサダー効果」があります。 商品やサービスに特別な愛着を持っている顧客は、その商品を家族や友人に紹介し、良いところを伝えてくれます。身近な人からの高評価は何よりも信頼性が高いので、そこからまた新たなロイヤルカスタマーを育成できるポジティブな循環が生まれます。 昨今は、SNSを利用してインフルエンサーに商品などを紹介してもらう宣伝方法がメジャーですが、フォロワー数や周囲への影響力だけが指標となるインフルエンサーマーケティングとは異なり、ロイヤルカスタマーによる商品の波及力は、商品やサービスに対する好意や熱量が元になるため、持続力や信頼度が高いのが特徴です。
影響力の大きさ
このように、ロイヤルカスタマーは、企業にとって大きな利益をもたらしてくれる重要な顧客であり、最も大切にすべき存在なのです。

3.ロイヤルカスタマー創出に不可欠な「カスタマーエクスペリエンス」

カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)とは「ある商品やサービスの利用における顧客視点での体験」のことです。「顧客体験」とも言われ、CXと略される場合もあります。 カスタマーエクスペリエンスは、購入前の段階から購入後のサポートまでの購買プロセス全体を対象にしています。 その商品やサービスを利用した直接的な体験はもちろん、商品やサービス利用後のサポートの手厚さなども顧客に満足感を与える事ができます。また、商品やサービスを提供する企業の雰囲気が良い、会員向けサービスが充実しているなどもカスタマーエクスペリエンスになるのです。 <商品購入の場合>
商品購入プロセス
<店舗の場合>
店舗購入プロセス
<会員誌などの場合>
会員誌購入プロセス
いわば、カスタマーエクスペリエンスは、商品やサービスの物理的な価値ではなく、「心が体験する心理的な価値」とも言えます。この心理的な価値を高めることで、顧客の心をつかみ、ファンになってもらうことこそがロイヤルカスタマーの創出につながります。

4.世代別の効果的なカスタマーエクスペリエンス事例

それでは、カスタマーエクスペリエンスを向上させるにはどうすればよいのでしょうか。 消費者は年齢・性別・興味・関心・行動パターンなど、それぞれに異なります。 個々の消費者にあった価値体験を提供できれば、商品やサービスへの信頼や愛着が高まり、企業のロイヤルカスタマーを創出できます。 そこで、世代ごとの特徴と効果的なカスタマーエクスペリエンスの事例をご紹介します。

・ミレニアル世代はパーソナライズされたコミュニケーションが大切

スマホをいじる十代
  インターネットが生まれたときから存在し「デジタルネイティブ」とも呼ばれるミレニアル世代は、「商品力」があれば購入していた従来の消費行動とは全く異なり、「より良い顧客体験がなければ買わない」というスタンスを持つ消費者です。 ミレニアル世代の50%以上が、パーソナライズ(個人ごとに情報を提示)されたコミュニケーションを大切にし、その提供がないと感じられたときには、ブランドを変更する可能性もあるというシビアな結果が出ています (参考:商品力だけでは買わないミレニアル)  

効果的なカスタマーエクスペリエンスの事例

モバイル端末向けのサイトを充実させ、人工知能(AI)によるレコメンデーションなどのサービスを取り入れることが効果的です。 1スターバックス コーヒーチェーン大手のスターバックスのモバイルアプリ『Mobile Order&Pay』では、アプリで事前注文・決済ができるだけでなく、ユーザーの購入データを基にドリンクのカスタマイズ提案を行うことで、アプリユーザーは通常の店舗利用者より来店頻度が高という結果をもたらしました。
スタバ
画像引用元: スターバックス Mobile Order&Pay   2株式会社SABON イスラエル発祥のバス&ボディコスメを販売する株式会社SABONJapanは、店舗と同じ価値体験をウェブサイトでも提供するためにパーソナライズを導入。顧客のステータスにあわせたトップページの表示を行ったところ、コンバージョン率が平均41%上昇しました。
SABON公式サイト
画像引用元:SABON公式サイト  

・40〜50代は信頼性を重視し、「自分が賢い消費者である」「特別な関係である」と感じられる事が高い体験価値を生む

買い物する若い女性
  この世代は他の世代に比べて、「食品」や「日用品」関連の企業への価値評価が高い傾向があります。支持理由には「信頼できる」「新しい提案をしてくれる」などが挙げられ、そのブランドを選んだ自分を賢い消費者だと思えることが顧客体験の高さにつながります。 また、会員コミュニティを活発に運営し、消費者と企業が「特別な関係になれる」ことも高い体験価値を生んでいます。  

効果的なカスタマーエクスペリエンスの事例

1オーケー 関東中心の1都4県のみで展開しているスーパーマッケットにも関わらず、スーパー顧客満足度ランキングで10年連続第1位を獲得しているオーケーストアは、商品価格が単に安いだけでなく、値札に特徴があります。全商品に必ず定価(標準価格)が記載され、そこから何割引で販売しているかを明記、さらに1袋あたりの単価まで記載されているので、顧客は安心して購入できます。そして、ここで買い物をする自分は賢い消費者だと思えることが高い顧客体験を生んでいます。
値段の展示風景
  2カゴメ 「&KAGOME(アンドカゴメ)」という会員制のコミュニティサイトを設立し、単なる宣伝や情報発信のサイトではなく「ファンと一緒に体験する」ことを目的に、「座談会」や「ファンミーティング」を年に10回程開催しています。 「会員の意見を聞きたい」という企業側からの要望もあり、企業と消費者がコミュニケーションを取って新商品の開発を実施。(開発商品:「濃厚仕立てのトマトソース」) 主力商品である「野菜生活」のCMサウンドもファンの声から生まれ、ファンにとっては「一緒にブランドを高めた」という貴重な経験となっています。 また、工場見学会や体験型施設でのトマト収穫や試食を体験する機会を継続的に設け、ファンとの特別な関係づくりに成功しています。
KAGOME公式サイト
画像引用元: 「&KAGOME」

・シニア世代は購入方法の利便性や店員の対応を重視、また「仲間」を意識できるサービスに高い体験価値を感じる

冊子を見ている60代
  シニア層が重要と感じるのはコストパフォーマンスや機能性よりも、購入の利便性や店員の対応です。また「考え方や価値観があっているかどうか」が購入の大きなポイントになり、コロナ禍では迅速かつ的確な商品開発など「快適で必要なものを必要な時に開発、供給してくれる」ことも選ばれる理由となります。 業種としては旅行や交通業界への価値評価が高く、定期的な冊子の配布など「仲間」を意識できるサービスが高い価値体験につながります。  

効果的なカスタマーエクスペリエンスの事例

1ヤクルト 自社の商品を専任の販売員(ヤクルトレディ)が直接宅配するため、顧客一人ひとりに合わせた商品提案や細やかな説明が可能です。お客様とコミュニケーションを取りながら、その日の気候や体調に合わせた商品を提案することが信頼となり、継続的な愛飲につながっています。 また「きらめき日和」という広報誌を定期的に発行し、顧客同士がつながりを感じる施策も行なっています。
ヤクルト1
画像引用元: ヤクルト公式サイト 2クラブツーリズム 旅行代理店のクラブツーリズムは 60 代以上からの支持が非常に高く、幅広い年齢層や個別のニーズに適した商品を豊富に打ち出すことで「顧客の気持ちや求めることをよく理解している」ブランドとして評価されています。 また、ツアーの予約が簡単なことや対応が親切であること以外にも、定期的な情報冊子の送付により「自分と似た人との帰属感を感じる」「仲間が広がる、旅が深まる」など「仲間」意識を醸成していることも高い顧客体験価値につながっています。
クラブツーリズム1 クラブツーリズム2
画像引用元: クラブツーリズム公式サイト

5.まとめ

「Zendeskカスタマーエクスペリエンス傾向分析レポート」によると、日本を含むグローバル全体において、たった一度のネガティブなカスタマーエクスペリエンスを体験すると顧客の半数が、さらに二度以上のネガティブな経験すると、およそ8割もの顧客が競合他社に切り替えることが明らかになりました。 この調査結果でもわかるように、カスタマーエクスペリエンスが企業にとってシビアな結果を招く一方で、商品やサービスの強いファンになってもらう効果は非常に大きく、生涯にわたって企業に貢献してくれる大切なお客様になる可能性があります。 先ほどご紹介した成功事例からもわかるように、ロイヤルカスタマーになってもらうために必要なのは、「個別のおもてなし(パーソナライズ)」「企業を介した仲間づくり(コミュニティ)」そして「企業と自分との特別感」を感じてもらうようなサービスを提供することです。 そのためには、実店舗での接客だけでなく、公式サイト・アプリ・会報誌など企業から発信するコンテンツが受け取る側にとってワクワクするものであり、通知や配信が楽しみに思えるような工夫が必要なのです。
シニア向け会報誌で見込み客のファン化や購買促進につなげるテクニック5選 シニア向け会報誌で見込み客のファン化や購買促進につなげるテクニック5選